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あいさつ

 人間は常に食べ物を口にしないと生きていけない。誰でもわかっているはずのことですが、それを忘れていることが多いように思います。かつて経験したフィリピンでのクーデター騒動の時のことですが、つい前日までやせるためのダイエットに取り組んでいた人でも、事務所の建物から出られないとなった途端に、配給されるはずだった1個のゆで卵を巡って口論するようになるという現実を目の当たりにしました。人間にとって食べ物の価値というのは命そのものと直接に繋がっているんだとその時感じたものです。
 地球上の75億人が食べ物を必要としているわけですが、そのうち8.2億人(FAO)もの人が栄養不足状態にあり、しかも人口は2050年には97億人に達すると予測されています(UN)。これまでは、水資源の開発などの生産性を上げる努力によって、穀物の生産量は人口増加に追いついてくることができました。しかしIPCCなど諸機関の将来予測によると、地球温暖化や、アメリカ有数の穀倉地帯であるグレートプレーンズでの地下水の大幅な低下など、生産をマイナスに引き込むような不安材料が多く指摘されています。
 このような状況ですから、穀物の国際価格は天候の変化に非常に敏感に反応します。2012年の米国での高温、乾燥をきっかけとして史上最高値を記録した大豆、トウモロコシなどの穀物価格は、2014年の小麦、トウモロコシの大豊作や南米での大豆の増産等により低下し、2017年以降は横ばいで推移しているものの、新興国の畜産物消費の増加を背景とした堅調な需要やエネルギー向け需要により、現在も2008年以前を上回る水準に高止まりしています。日本のように経済力のある国ではこの程度の価格の変化はほとんど問題になりませんが、アフリカやアジアの途上国の貧困層の人々にとっては命に係わる問題です。

 恵まれたことに、日本では地域によるばらつきはありますが平均すると年間1600ミリもの雨が降ります。この降雨を利用して弥生時代から令和時代に至るまでずっと水田稲作が続けられてきました。水田は一時的に水をためますから、用水中の養分が自動的に作物に供給されるとか、土壌が流失しにくいという特質があるために、収奪的でない循環型の農業を可能としてきました。
世界中どこを見ても水資源の開発が限界に近くなり、新たな農地の開発も困難になっている状況の中で、日本人が、二千数百年かけて拓いてきた農地と恵まれた降雨を最大限に活用して農業生産を持続することは、日本人自身のために必要であるだけでなく、地球上の国際社会の一員としての責務でもあるのです。
 この持続のためには、農業生産のための基本である農地の性能や、大規模な用排水システムの機能を常に維持・向上させることが必要になります。さらに農業生産のための空間であると同時に、人々の暮らしのための空間でもある農村の環境を整えることも必要です。

 全国農村振興技術連盟は、力強い農業の実現と美しく豊かな田園空間の創出による農村の振興という目標を共有する、多様な組織の技術者、研究者、学生等が総合的な技術力の向上を目指して情報交換、出版、研修会などの活動を行う会員組織です。当連盟では、技術者という呼称はいわゆる理科系の専門分野を学んだ人だけを指すとは考えていません。農村振興という目標を共有していただけるすべての方々の参画をお持ちいたします。
                                 全国農村振興技術連盟
                                  委 員 長 林田 直樹